デジタルトランスフォーメーション（DX）が進む現代、企業が競争力を維持・向上させるためにはDX人材の育成が不可欠です。
DX人材とは、デジタル技術を駆使して業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出をリードする存在です。
本記事では、DX人材の具体的な役割や、企業が求めるスキル、持つべき意識について概要を理解するための情報をまとめていきます。
DX人材の定義
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのスキルや知識を持った人材を「DX人材」と表現します。
DXについては以前に概要をまとめているので、まずはそちらをご確認ください。
データ活用やデジタル技術の進化により、日本や他の国々で産業構造が変わりつつあります。
この変化の中で、企業が競争優位性を確立するためには、常に変化する社会や顧客の課題を把握し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現することが重要です。
しかし、多くの日本企業はDXの取り組みで遅れを取っているとされています。
その主な原因の一つは、DXに関する知識や専門性を持った人材が不足していることです。
また、経営層を含む全ての従業員がDXの知識と関心を持ち、自分ごととして捉えることが重要です。
そのため、全てのビジネスパーソンにDXに関するリテラシーを身につけてもらい、変革に対する受容性を高める必要があります。
加えて、具体的にDXを推進するためには、専門性を持った人材の確保と育成が求められます。
ここからはもう少しDX人材の詳しい内容を確認しつつ、どのような人材が求められているのかを確認します。
デジタルスキル標準
DXの推進において人材の重要性を考慮し、個人の学習や企業の人材確保・育成を支援するための「デジタルスキル標準」を策定しています。
デジタルスキル標準は、デジタル技術を活用して企業の競争力を向上させる人材を対象としています。
この中で、「DXリテラシー標準」は全てのビジネスパーソンを対象にしており、「DX推進スキル標準」は専門性を持ってDXの取り組みを推進する人材を対象としています。
DXリテラシー標準
全てのビジネスパーソンが身につけるべき基礎的な知識やスキル、マインドセットを示す指針
DX推進スキル標準
DXを推進するための専門性を持つ人材の役割や必要なスキルを示す指針
これらの標準は、共通の指標として使いやすいように設計されており、特定の産業や職種に依存しない汎用的な内容となっています。しかし、各企業や組織がこれらを具体的に適用する際には、自社の業界や事業方針に合わせてカスタマイズする必要があります。
DX推進スキルの必要性
企業がDXを推進する人材を十分に確保できていない背景には、自社のDXの方向性を描くことや、自社にとって必要な人材を把握することの難しさがあると考えられます。そのため、各社はDXを通じて何を達成したいのかというビジョンを明確にし、その推進に向けた戦略を立てることが重要です。
さらに、実現に向けてどのような人材を確保・育成するべきかを適切に設定する必要があります。
「DX推進スキル標準」はその参考となる指針ですが、スキル標準をそのまま戦略とするのではなく、スキルを闇雲に身につけるだけではDXは進まないことに留意が必要です。
DXを推進する主な人材としての5つの「人材類型」
5つのDXを推進する人材類型の定義をまとめました。
- ビジネスアーキテクト:
- ビジネスの視点と顧客・ユーザーの視点を総合的に捉え、製品・サービスの方針や開発プロセスを策定し、それに沿ったデザインを担います。
- デザイナー:
- 製品・サービスのデザインを担当し、顧客体験を向上させるためのビジュアルやインタラクティブな要素を設計します。
- データサイエンティスト:
- データを活用して業務変革や新規ビジネスの実現を目指し、データの収集・解析の仕組みを設計・実装・運用します。
- ソフトウェアエンジニア:
- デジタル技術を活用した製品・サービスの提供に向けたシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担当します。
- サイバーセキュリティ:
- 業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクを抑制する対策を担い、企業の情報資産を守ります。
これらの人材は、他の類型とのつながりを積極的に構築し、協力してDXを推進することが重要です。また、社内外から適切な人材を積極的に探索することも大切です。
関係省庁におけるデジタルスキル標準の活用と普及サポート
デジタルスキル標準の公開後は、関係省庁との連携の下で、民間企業の協力を得て普及と活用を進めます。
主に下記3点の項目から、ユーザーからのフィードバックを取り入れつつデジタルスキル標準の継続的な見直しも行います。
DXを推進する人材の育成
- デジタルスキル標準を習得するための教育コンテンツの充実。
- 「マナビDX」のコンテンツをデジタルスキル標準に紐づけて掲載。
デジタルスキル標準の普及策
- 有識者（検討委員）や推進団体による情報発信。
- ユーザー（DXに取り組む産業界等）との連携。
デジタルスキル標準の継続的な更新と拡充
- ユーザーの活用事例やフィードバックの把握。
- 技術動向や市場変化を踏まえた継続的な見直し。
これらの取り組みにより、DXを推進するための人材の育成・確保と、デジタルスキル標準の普及が進められます。
まとめ
「DX人材が必要だ！」と一口に言っても、どのようなスキル・マインドが必要かが漠然としている状態では真に求められる人材にはなりえません。
まずは「DX人材」とは何か、求められていることは何かを把握することが肝要です。
その上で、個々の役割に沿った知識を会得しつつ、さらに企業として求められている役割を全うすることが大事になるのではないかと考えます。
まずはDXの全体像から把握しつつ、国としてどのようなサポートが為されているかを理解してみましょう。
そのうえで、求められている役割に沿ったスキル・マインドを深化させていくことが、DX推進を進める核となっていくことでしょう。
※参考資料：情報処理推進機構・経済産業省「<概要編>デジタルスキル標準ver.1.2」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/20240708-gp-1.pdf
